医療系資格と薬の話

学生と一般利用者を対象にしている医療系の書き物。中の人は薬剤師。

独占業務について

この項目では免許のことを便宜上、資格と表記します。

まず、資格には独占資格と非独占資格があります。
独占資格とは、何かを独占できる資格。
非独占資格とは、独占できるものがない資格です。

独占資格は細かく分けると3つ存在します。
その資格を有するもの以外、資格名を名乗ってはならない。
例えば、医師免許を持つもの以外、紛らわしい職種名を名乗ったり医師と名乗ることは禁止されています。
これは各職種の業務範囲を規定する法律で謳われています。ただし国家資格に限る。
例としては以下のものが該当します。
医師
獣医師
薬剤師
看護師
栄養士
管理栄養士

業として行うことが独占できる資格です。
医師…医業(診療行為)、死亡診断書作成
獣医師…獣医師法で定められた獣医師業
歯科医師…歯科医業
薬剤師…調剤業務
看護師…医師の診療補助業務と患者の療養上の世話
診療放射線技師…診療時の放射線照射

この他の医療系国家資格に独占業務はありません。
栄養士の栄養指導は、医師でも看護師でも薬剤師でも行って構いません。むしろ必要性を感じたらば診察中に、服薬指導中に栄養指導することは一般的に行われますし妥当至極。
管理栄養士も独占業務は一切ありません。
臨床検査技師の業務範囲は医師が行うこともあり、診療補助と捉えると看護師も業務ができます。これは視能訓練士の業務範囲と同様です。
リハビリ関係の職種も一切独占業務は持ち合わせていません。

また、看護業務と調剤業務、放射線照射については例外規定があり、相応の事情がある場合のみ医師が「自ら」行うことを可能としています。 ただしその条件を逸脱すると医師でも各法律の名目上、刑事罰が課せられます。

補足ですが、業務独占資格には更に細かく2つに分類できます。有償業務独占資格と無償業務独占資格です。
医業は無償業務独占資格です。
金銭や見返りがなくても、業として医業を行うことすらも禁止されています。
有償業務独占資格は主に法律系士業に該当する場合が多く、税理士や弁理士などが該当します。
業として、は業務としてと言い換えができますが、分かりやすく表現すると自分以外の対象者に行うことです。

⑶行為独占資格
あまり知られていませんが、日本の法律上は2つしか存在しません。
これは業としなくても、その行為を行うこと自体が独占的であるものです。
前述の業務独占資格は自分以外の対象者に行う場合を規定していますが、行為独占資格は自分に行う場合も禁止されています。
まず一つ目が建築士による建築業務。
二つ目が薬剤師による調剤業務。

調剤業務は、薬剤師免許がない人が自分の薬を調剤することすらも禁止されています。
しかし医業については行為独占ではありません。自分の状態を自己判断で勝手に病名付けても違法ではない。まあ、何の効力もありませんからね、素人が病名を自称しても。

調剤業務とは医師、歯科医師、獣医師の作成した処方箋に基づいて医薬品の調合と調整をする行為をいいます。調剤とは薬を集めるだけではなく、処方の妥当性を医学的且つ薬学的に判断して、処方元に訂正や処方提案をする範囲と、服薬指導も含まれています。
医薬品の勝手な調整はもとより、妥当性の判断をして医師に処方訂正を依頼する行為は無資格者には認められていません。
調剤業務が行為独占資格と言われるのはこれが理由です。