医療系資格と薬の話

学生と一般利用者を対象にしている医療系の書き物。中の人は薬剤師。

免許取得者の供給過多

実に各分野で叫ばれる内容です。

医師の場合
医師の資質を確保するため、長らく医学部の新設は医師会からの強い反発で行われていませんでした。医師会の意向だけでなく、国の方策としても医師の数確保として管理されています。
少し昔に医学部の定員を増やした際にも医師の中では、医師の質が下がったと言われたそうです。
震災の影響から2016年に医学部が新設されます。東北薬科大学に医学部が新設され、東北医科薬科大学と名称も変わります。
医師不足と一部では言われますが、地域性や診療科目のばらつきの問題であり医師の総数は足りているというのが医師会の見解です。
医師免許は最強です。これは異論ありません。取得できれば診療以外にも産業医老健施設の施設長など意外に就職先はあります。
志ある方は目指して下さい。

歯科医師の場合
私立大学の歯学部が乱立したことにより歯科医師免許の取得者が激増しており、供給過多は否定のしようがない事実です。また一般的に歯科医師は免許をタンスの肥やしにしているケースが少ない上に、歯科医師免許は歯科医師にしかなれないため勤務医になるか開業するかの2択しかありません。よって患者争奪が長いこと行われています。
土曜午後や日曜診療、在宅まで多岐に業務展開して生き残りを図ったり、審美歯科のように自由診療に身を委ねるケースもあります。
開業している場合、定年が自己判断でしかないので団塊の世代など世代の問題は影響が薄いと考えられます。
国の方針としては歯科医師国家試験の難易度を上げ、取得者増加に歯止めを掛けています。

薬剤師の場合
私立大学の薬学部乱立が起こり、4年制の頃からすると薬学部は現在約2倍あります。
10-15年前から薬剤師は供給過多になると言われていましたが、未だに不足しています。
理由は幾つか考えられます。
第一に、女性の免許取得者が多くタンスの肥やしになっているケースが多い。
第二に、国家試験の出題傾向が変わり合格率が年々下がっている。4年制の頃は85%程だった合格率も60%になりました。2015年度の国家試験は実際の合格率は50%でしたがあまりにも不合格者が多く供給できないため不適切問題として10問程度全員合格になり60%まで引き上げられました。なんだそれ?
結果、4年制の頃と現在では新規の薬剤師は1年で排出される頭数が変わっていません。
つまり圧倒的に定員が増えたにもかかわらず薬剤師になれる数が変わっていないのは、留年率が高く国家試験にも落ちまくってるから。偏差値が下がった挙句がこれです。
また別の見方では、薬剤師は臨床以外の就職先が多いため臨床の供給過多は起こっていません。
実際私も、治験業務に携わっていましたし、医療経営コンサルタントの会社に在籍していたこともあります。

看護師の場合
慢性的に不足しています。
シフト制なので家庭との両立も不可能ではないのですが不足している理由は明快です。
看護業務は「医療系の3K」だから。
こう書くと看護師の友人に叱られますが、事実生半可な意識では務まらない業務なので辞めていく人が多いです。逆を言うとそれだけやりがい深い業務だと思います。
今後医療系に進みたい方には看護師を強く勧めます。広く浅く各分野を知ることができる職種です。日常生活にも大いに役立ちます。
ただ、社会人から看護師を目指す方は准看護師になる場合が多いです。これは在学期間が短くて済むからです。
個人的に准看護師は何人か友人にいますが、給与は伸びません。もし可能ならば看護師になりましょう。

よく見かけるのは、検査の自動化による人員削減で求人が少ない。これもまた事実かもしれませんが、臨床検査技師離職率が低いため求人が出ないのも一因です。
機器メーカーの技術部や開発、営業に就くケースも多いです。また食品関係の衛生検査等に従事するケースもあります。
実際は4年制大学で取得するケースが現在は多くなりました。以前は専門学校で取れた資格ですが専門化している分野なので大学教育に移行しています。

未だ専門学校や4年制大学まで教育機関は多岐に渡りますが、専門化している分野です。
平均給与は高めですが、放射線被曝している手当と考えるのが妥当と考えられます。彼らの業務範囲は、臨床検査技師では扱うことが許されない高エネルギーの電磁波を用いた検査機器の操作です。
個人診療院では医師が自ら行いますが、中規模以上では設置されています。
供給過多であるとは考えられませんが、不足しているとも耳にしません。

臨床工学士の場合
不足しています。彼らは人工心肺の操作や人工透析の機器の操作とメンテナンスを行う医療系の工学技師です。
不足しているのは透析分野です。年々透析導入する患者が増えていることや、看護師には機器メンテナンスや操作は手が回らないため必要とされています。
教育機関は専門学校から4年制大学まで多岐に。

詳しいことは知りません。
ただ、眼鏡屋にも就職するケースがあるようです。眼科領域では増えすぎると眼鏡屋に流れるのかもしれません。

栄養士の場合
不足しています。
ただし正社員枠はほぼ皆無か、条件が悪いため就てる人が少ないのが実情。理由は前述の通り独占業務があるわけではないので献立作りをしてもらいたいから。また特別な試験が必要ではなく短大卒業で勝手に付与される資格なので希少価値がないためタンスの肥やしになってる割合が桁外れに多いです。
老人ホーム等の求人が圧倒的に多いです。
比較的新しい栄養教諭への道が手堅いか。
ちなみに栄養士は都道府県知事が認める資格で国家資格ではありません。

管理栄養士の場合
圧倒的に過剰です。
彼らの業務範囲は、患者の疾病を治癒しやすいように栄養管理と指導をして献立を考えること、ですが独占業務ではありません。
病院で必要とされるのは稀な例を除き1施設1人で事足ります。理由は栄養指導の加算が取れるから。その加算を取る「だけ」で雇われる事もあります。
今は旧来の栄養学部に加え、農学部家政学部、場合によっては保健科学系学部でも管理栄養士コースが乱立しています。大卒の合格率は90%を超えます。
難関資格と思い込んでいる方もも多いですが、短大卒の社会人が実務経験を重ねて仕事をしながら受験しているために全体の合格率が低いだけです。
また企業で管理栄養士が必要とされるケースも多くはありません。管理栄養士の業務は患者の…でしたよね。商品開発に必要な絶対条件になる資質とは言い難いです。
むしろ研究開発の土壌では、理学部大学院卒や農学部大学院卒に敵うはずありません。