医療系資格と薬の話

学生と一般利用者を対象にしている医療系の書き物。中の人は薬剤師。

医師の指示のもとの業務

日本では医師以外の医療職をコメディカルと言います。英語ではパラメディカルです。

基本的に、コメディカルは医師の指示のもと業務をすることができる。と各法律で規定されていますが、規定されていない職種があります。

医師とは独立した医療職なので医師の指示は必要としていません。当たり前ですね。

⑵薬剤師
処方箋に基づき調剤をする行為は、医師の指示は必要としていません。
むしろ正当な理由がある場合は調剤拒否することも薬剤師法で認められています。
例えば、薬剤師は処方の疑問を解消しない場合は調剤をしてはならず、医師に直接確認を取る必要があります。
医師が問い合わせを拒否した場合や、疑義が解消されない場合は調剤拒否が認められています。

⑶看護師
国が指定する研修を修了した看護師のみ、医師の指示がなくても気管挿管や脱水症状に対する点滴の実施などができるようになりました。
順次、看護師が行える医療行為や医師の指示を必要としない業務範囲も増えていくと考えられます。
ただし基本的には医師の指示は必要とする職種であることには変わりありません。

その他の医療系の資格が持つ独占業務は、すべて医師の指示が必須です。
独自の判断で業務を行うことは違法扱いです。
救急救命士については無知なため割愛させて頂きますがご容赦ください。


最初の内容で、独立開業することを前提とするならば医師の指示が必要ではない職種にしろ、と書きました。

歯科医師は当然開業可能です。

按摩マッサージ師、はり師、きゅう師、柔道整復師は保健を取り扱わない範囲であれば施術者の判断で業務は可能。保健を扱う場合は医師の診断が前提となりますが、主体的に保健請求を掛けられない点には注意が必要です。
よって開業は可能。ただし競合相手が多い。

薬剤師は医薬品の開発と流通、販売の管理者としての資格である上に管理業務と調剤業務の両者が医師の指示を一切必要としていないので独立開業は可能です。
また院外処方の場合は、保健請求は主体的に行えるため医師の指示とは一線を画しています。つまり診療報酬ではなく調剤報酬として保健請求を掛けることができます。

看護師の場合、介護施設を開設することは可能です。必置条件でもあるため。
看護師もケアマネ資格を取って介護分野に進出するケースも少なくありません。

一国一城の主として、経営に興味がある方はこれらの資格を視野に入れてみるのもいいかもしれません。

免許取得者の供給過多

実に各分野で叫ばれる内容です。

医師の場合
医師の資質を確保するため、長らく医学部の新設は医師会からの強い反発で行われていませんでした。医師会の意向だけでなく、国の方策としても医師の数確保として管理されています。
少し昔に医学部の定員を増やした際にも医師の中では、医師の質が下がったと言われたそうです。
震災の影響から2016年に医学部が新設されます。東北薬科大学に医学部が新設され、東北医科薬科大学と名称も変わります。
医師不足と一部では言われますが、地域性や診療科目のばらつきの問題であり医師の総数は足りているというのが医師会の見解です。
医師免許は最強です。これは異論ありません。取得できれば診療以外にも産業医老健施設の施設長など意外に就職先はあります。
志ある方は目指して下さい。

歯科医師の場合
私立大学の歯学部が乱立したことにより歯科医師免許の取得者が激増しており、供給過多は否定のしようがない事実です。また一般的に歯科医師は免許をタンスの肥やしにしているケースが少ない上に、歯科医師免許は歯科医師にしかなれないため勤務医になるか開業するかの2択しかありません。よって患者争奪が長いこと行われています。
土曜午後や日曜診療、在宅まで多岐に業務展開して生き残りを図ったり、審美歯科のように自由診療に身を委ねるケースもあります。
開業している場合、定年が自己判断でしかないので団塊の世代など世代の問題は影響が薄いと考えられます。
国の方針としては歯科医師国家試験の難易度を上げ、取得者増加に歯止めを掛けています。

薬剤師の場合
私立大学の薬学部乱立が起こり、4年制の頃からすると薬学部は現在約2倍あります。
10-15年前から薬剤師は供給過多になると言われていましたが、未だに不足しています。
理由は幾つか考えられます。
第一に、女性の免許取得者が多くタンスの肥やしになっているケースが多い。
第二に、国家試験の出題傾向が変わり合格率が年々下がっている。4年制の頃は85%程だった合格率も60%になりました。2015年度の国家試験は実際の合格率は50%でしたがあまりにも不合格者が多く供給できないため不適切問題として10問程度全員合格になり60%まで引き上げられました。なんだそれ?
結果、4年制の頃と現在では新規の薬剤師は1年で排出される頭数が変わっていません。
つまり圧倒的に定員が増えたにもかかわらず薬剤師になれる数が変わっていないのは、留年率が高く国家試験にも落ちまくってるから。偏差値が下がった挙句がこれです。
また別の見方では、薬剤師は臨床以外の就職先が多いため臨床の供給過多は起こっていません。
実際私も、治験業務に携わっていましたし、医療経営コンサルタントの会社に在籍していたこともあります。

看護師の場合
慢性的に不足しています。
シフト制なので家庭との両立も不可能ではないのですが不足している理由は明快です。
看護業務は「医療系の3K」だから。
こう書くと看護師の友人に叱られますが、事実生半可な意識では務まらない業務なので辞めていく人が多いです。逆を言うとそれだけやりがい深い業務だと思います。
今後医療系に進みたい方には看護師を強く勧めます。広く浅く各分野を知ることができる職種です。日常生活にも大いに役立ちます。
ただ、社会人から看護師を目指す方は准看護師になる場合が多いです。これは在学期間が短くて済むからです。
個人的に准看護師は何人か友人にいますが、給与は伸びません。もし可能ならば看護師になりましょう。

よく見かけるのは、検査の自動化による人員削減で求人が少ない。これもまた事実かもしれませんが、臨床検査技師離職率が低いため求人が出ないのも一因です。
機器メーカーの技術部や開発、営業に就くケースも多いです。また食品関係の衛生検査等に従事するケースもあります。
実際は4年制大学で取得するケースが現在は多くなりました。以前は専門学校で取れた資格ですが専門化している分野なので大学教育に移行しています。

未だ専門学校や4年制大学まで教育機関は多岐に渡りますが、専門化している分野です。
平均給与は高めですが、放射線被曝している手当と考えるのが妥当と考えられます。彼らの業務範囲は、臨床検査技師では扱うことが許されない高エネルギーの電磁波を用いた検査機器の操作です。
個人診療院では医師が自ら行いますが、中規模以上では設置されています。
供給過多であるとは考えられませんが、不足しているとも耳にしません。

臨床工学士の場合
不足しています。彼らは人工心肺の操作や人工透析の機器の操作とメンテナンスを行う医療系の工学技師です。
不足しているのは透析分野です。年々透析導入する患者が増えていることや、看護師には機器メンテナンスや操作は手が回らないため必要とされています。
教育機関は専門学校から4年制大学まで多岐に。

詳しいことは知りません。
ただ、眼鏡屋にも就職するケースがあるようです。眼科領域では増えすぎると眼鏡屋に流れるのかもしれません。

栄養士の場合
不足しています。
ただし正社員枠はほぼ皆無か、条件が悪いため就てる人が少ないのが実情。理由は前述の通り独占業務があるわけではないので献立作りをしてもらいたいから。また特別な試験が必要ではなく短大卒業で勝手に付与される資格なので希少価値がないためタンスの肥やしになってる割合が桁外れに多いです。
老人ホーム等の求人が圧倒的に多いです。
比較的新しい栄養教諭への道が手堅いか。
ちなみに栄養士は都道府県知事が認める資格で国家資格ではありません。

管理栄養士の場合
圧倒的に過剰です。
彼らの業務範囲は、患者の疾病を治癒しやすいように栄養管理と指導をして献立を考えること、ですが独占業務ではありません。
病院で必要とされるのは稀な例を除き1施設1人で事足ります。理由は栄養指導の加算が取れるから。その加算を取る「だけ」で雇われる事もあります。
今は旧来の栄養学部に加え、農学部家政学部、場合によっては保健科学系学部でも管理栄養士コースが乱立しています。大卒の合格率は90%を超えます。
難関資格と思い込んでいる方もも多いですが、短大卒の社会人が実務経験を重ねて仕事をしながら受験しているために全体の合格率が低いだけです。
また企業で管理栄養士が必要とされるケースも多くはありません。管理栄養士の業務は患者の…でしたよね。商品開発に必要な絶対条件になる資質とは言い難いです。
むしろ研究開発の土壌では、理学部大学院卒や農学部大学院卒に敵うはずありません。

独占業務について

この項目では免許のことを便宜上、資格と表記します。

まず、資格には独占資格と非独占資格があります。
独占資格とは、何かを独占できる資格。
非独占資格とは、独占できるものがない資格です。

独占資格は細かく分けると3つ存在します。
その資格を有するもの以外、資格名を名乗ってはならない。
例えば、医師免許を持つもの以外、紛らわしい職種名を名乗ったり医師と名乗ることは禁止されています。
これは各職種の業務範囲を規定する法律で謳われています。ただし国家資格に限る。
例としては以下のものが該当します。
医師
獣医師
薬剤師
看護師
栄養士
管理栄養士

業として行うことが独占できる資格です。
医師…医業(診療行為)、死亡診断書作成
獣医師…獣医師法で定められた獣医師業
歯科医師…歯科医業
薬剤師…調剤業務
看護師…医師の診療補助業務と患者の療養上の世話
診療放射線技師…診療時の放射線照射

この他の医療系国家資格に独占業務はありません。
栄養士の栄養指導は、医師でも看護師でも薬剤師でも行って構いません。むしろ必要性を感じたらば診察中に、服薬指導中に栄養指導することは一般的に行われますし妥当至極。
管理栄養士も独占業務は一切ありません。
臨床検査技師の業務範囲は医師が行うこともあり、診療補助と捉えると看護師も業務ができます。これは視能訓練士の業務範囲と同様です。
リハビリ関係の職種も一切独占業務は持ち合わせていません。

また、看護業務と調剤業務、放射線照射については例外規定があり、相応の事情がある場合のみ医師が「自ら」行うことを可能としています。 ただしその条件を逸脱すると医師でも各法律の名目上、刑事罰が課せられます。

補足ですが、業務独占資格には更に細かく2つに分類できます。有償業務独占資格と無償業務独占資格です。
医業は無償業務独占資格です。
金銭や見返りがなくても、業として医業を行うことすらも禁止されています。
有償業務独占資格は主に法律系士業に該当する場合が多く、税理士や弁理士などが該当します。
業として、は業務としてと言い換えができますが、分かりやすく表現すると自分以外の対象者に行うことです。

⑶行為独占資格
あまり知られていませんが、日本の法律上は2つしか存在しません。
これは業としなくても、その行為を行うこと自体が独占的であるものです。
前述の業務独占資格は自分以外の対象者に行う場合を規定していますが、行為独占資格は自分に行う場合も禁止されています。
まず一つ目が建築士による建築業務。
二つ目が薬剤師による調剤業務。

調剤業務は、薬剤師免許がない人が自分の薬を調剤することすらも禁止されています。
しかし医業については行為独占ではありません。自分の状態を自己判断で勝手に病名付けても違法ではない。まあ、何の効力もありませんからね、素人が病名を自称しても。

調剤業務とは医師、歯科医師、獣医師の作成した処方箋に基づいて医薬品の調合と調整をする行為をいいます。調剤とは薬を集めるだけではなく、処方の妥当性を医学的且つ薬学的に判断して、処方元に訂正や処方提案をする範囲と、服薬指導も含まれています。
医薬品の勝手な調整はもとより、妥当性の判断をして医師に処方訂正を依頼する行為は無資格者には認められていません。
調剤業務が行為独占資格と言われるのはこれが理由です。

医療系免許について(はじめに)

学生の方で医療系の職種を進路に考えている方。

また社会人で、医療系の免許を取得して転職したい方。

背景や思いは各々違うと思いますが、まず念頭に置いて戴きたい点があります。

 

「儲かるから」という理由ならば、その考えは間違っています。

医療系職種の最大の魅力は「専門性による雇用の安定」です。

 

年収の上昇を望んで転職のきっかけにしたい場合、それ相応の免許や資質が無いと稼ぎは良くなりません。

またそれら医療系職種に必要な免許には受験資格が設定されており、正規の教育機関を卒業しているか、○年過程の大学を卒業しているか、大学院前期課程卒業(修士)が必須なものまで多岐に渡ります。

 

医療系職種で食えるか食えないかを判断する場合、その職種には次に挙げる項目が該当するかを見てください。

(1)独占業務を持つ免許かどうか。

(2)免許取得者が供給過多かどうか。

また独立開業する場合は次の項目も必須になります。

(3)「医師の指示のもと」の業務ではないこと。

 

次のページから細かく見ていきましょう。